アントニオ・ヴィヴァルディ Antonio Vivaldi
ヴァイオリン協奏曲集《四季》 Le quattro stagioni
Side 1
協奏曲 第1番 ホ長調 RV269 《春》
Concerto No. 1 for violin and strings in E major, RV 269 "La primavera"
Band 1 第1楽章: Allegro
Band 2 第2楽章: Largo
Band 3 第3楽章: Allegro (Danza pastorale)
協奏曲 第2番 ト短調 RV315 《夏》
Concerto No. 2 for violin and strings in G minor, RV 315 "L'estate"
Band 4 第1楽章: Allegro non molto - Allegro
Band 5 第2楽章: Adagio - Presto - Adagio
Band 6 第3楽章: Presto (Tempo impetuoso d'estate)
Side 2
協奏曲 第3番 へ長調 RV293 《秋》
Concerto No. 3 for violin and strings in F major, RV 293 "L'autunno"
Band 1 第1楽章: Allegro (Ballo, e canto de'villanelli)
Band 2 第2楽章: Adagio molto (Ubriachi dormienti)
Band 3 第3楽章: Allegro (La caccia)
協奏曲 第4番 へ短調 RV297 《冬》
Concerto No. 4 for violin and strings in F minor, RV 297 "L'inverno"
Band 4 第1楽章: Allegro non molto
Band 5 第2楽章: Largo
Band 6 第3楽章: Allegro
フェリックス・アーヨ(ヴァイオリン) Felix Ayo, Violin
イ・ムジチ合奏団 I Musici
フェリックス・アーヨ(vn)
■発売日:2025年5月24日
■品番:ESLD-10010
■仕様:LP 180g重量盤
■JAN:4907034225705
■レーベル:DECCA(旧フィリップス)
■音源提供:ユニバーサルミュージック合同会社
■ジャンル:協奏曲
■厚紙シングルA式ジャケット
■企画・販売:エソテリック株式会社
20世紀後半のバロック音楽ブームの火付け役となった、美麗なカンタービレと豊潤な歌に満ちた、最もイタリア的な《四季》
■巨匠トスカニーニが絶賛したアンサンブル
20世紀中盤に実現したLPレコードの到来・普及とともに一気に加速したのがいわゆるバロック音楽への関心でした。1952年、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院の学生によって結成され、イタリア語で「音楽家たち」という名を冠したイ・ムジチ合奏団は、そうしたバロック音楽への人々の関心を感じ取り、19世紀風のロマンティシズムに歪められたヴィヴァルディやコレッリを始めとするイタリア・バロック音楽の表現を正したい、という思いで演奏活動を開始。第1ヴァイオリン3-第2ヴァイオリン3-ヴィオラ2-チェロ2-コントラバス1という弦楽アンサンブル11名にチェンバロ1名を加えた12名というコンパクトな編成を採用し、レパートリーを含む演奏方針についてはメンバー全員による合議制という体制を整え、第2次大戦後に加速したバロック音楽についての研究や楽譜の出版という学術的な正当性をバックグランドにすることで、クラシック音楽の新たなジャンルの開拓に乗り出したのです。イ・ムジチ合奏団は、1952年にデビュー後、数年のうちに大きな成功をおさめ、ヨーロッパのみならず南米アメリカを含む世界的な人気を獲得。イ・ムジチの演奏に接した巨匠アルトゥーロ・トスカニーニも「ブラヴォー!ブラヴィッシモ!音楽は死んでいなかった!」と激賞し、その人気の高まりにお墨付きをつける形となりました。
■空前のベストセラーとなった伝説の《四季》
戦後のバロック音楽ブームは、SP盤特有のノイズに煩わされずより微細な響きを聴き取る必要のあるこのジャンルの音楽の特性に最適だったLPレコードの開発とともに大きくなり、1950年代後半に開発されたステレオ技術はそれをさらに加速させました。そうしたブームの象徴となった曲がヴィヴァルディの《四季》であり、この曲の人気を世界的に爆発させたのがイ・ムジチ合奏団でした。彼らはアンサンブルとしてのデビュー後間もなく英コロンビアに録音を開始しますが、1955年にこのヴィヴァルディの《四季》のモノラル録音でオランダのフィリップス・レーベルにデビューしてフランスのディスク大賞を獲得。そのわずか4年後にステレオで再録音したのが今回久々にアナログ盤として復刻される当盤で、この2枚合わせてトータルのセールスが180万枚を超えるというクラシック音楽のレコードとしては空前の記録を達成したのでした。
■《四季》といえばイ・ムジチの代名詞
イ・ムジチ合奏団の持つ、明るくしかも艶をおびた音色、溌溂としたリズムと明晰さ、見事なレガート奏法、そして各奏者の均質性は、このヴィヴァルディの名曲の再現には最適で、20世紀後半のこの曲のイメージの原点となったといっても過言ではありません。曲に付されたソネットに記されているような描写性を特に強調せず、即興的な装飾なども加えず、自然な緩急をつけながらも全体としては妥当なテンポを採り、楽譜を忠実に再現する極めてオーソドックスなアプローチは、この曲の持つ美しさを純粋に味わうことのできるうえでかけがえのないもの。イ・ムジチはCD時代に至る半世紀以上にわたってフィリップスに《四季》をさらに4回の録音を重ねていますが(2012年に別レーベルに通算7度目の録音を行っています)、その原点ともなったのがこの1959年の最初のステレオ録音(通算では2度目)でした。ヴァイオリン・ソロを担ったのはコンサートマスターのフェリックス・アーヨ(1933年スペイン・バスク地方のセスタオ生まれ)。イ・ムジチの創設メンバーの一人で、1968年まで17年間にわたって在籍し、第1期黄金時代を築き上げました。アーヨの特徴は、何といっても楽器を豊かに鳴らして生み出される磨き上げられた音色と絶妙なボウイングによる美しいフレージング。これによって、歌う楽器としてのヴァイオリンの魅力が極限まで発揮されています。
■美しく究められた、尽きることのないレガートの魅力
このイ・ムジチの1959年盤の特徴は、全編にわたって繰り広げられる途切れることのないレガート奏法の魅力といえるでしょう。その最高の例が〈春〉の第1楽章のあの有名な主題で、この主題が登場するたびにレガートで奏され、曲の魅力をこれ以上ないほどに聴き手に伝えます。同じアーヨが独奏した1955年のモノラル盤でも、アーヨ以降のイ・ムジチによるどの《四季》の録音でも、1959年盤ほどの陶酔的なレガートを採用した例はありません。一つ一つの音符に歌心を込めることを優先するためにやや遅めのテンポを設定しているのもこの盤の独自性で、そのおっとりとした魅力は他には代えがたい魅力を持っています。
■演奏の魅力を味わえる癖のないナチュラルなサウンド
イ・ムジチの録音の多くは時計で有名なスイスのラ・ショー・ド・フォンにある音響効果抜群のサル・ド・ミュジックで行われましたが、当盤の《四季》はウィーン(会場不詳)で録音されています。後年のイ・ムジチの録音ほど残響感はないものの、適度な広がりと明晰度で中低音の響きが充実した、ボディのある弦楽のサウンドを味わうことができます。プロデュースを手掛けたヴィットリオ・ネグリ(1923-1999)はヴィヴァルディの研究者として知られ、イ・ムジチが演奏する楽譜の編纂にもかかわり、1950年代後半からはフィリップスのプロデューサーとしてイ・ムジチを始めとする数多くの録音をプロデュースした人物。モーツァルト学者として著名な指揮者のベルンハルト・バウムガルトナーのアシスタントを務めたこともあるプロの指揮者でもあり、後年はヴィヴァルディの宗教曲集や歌劇《ティート・マンリオ》など指揮者としての録音もフィリップスに残しています(アーヨとは1975年にベルリン室内管弦楽団と《四季》を再録しており、この1959年盤とは正反対の、アイデア満載で、手練手管を尽くした立体的で歯切れのよい演奏を成し遂げています)。この演奏の国内プレスによるアナログ盤は1982年が最後で、今回のアナログ盤復刻は33年ぶりとなります。新たにオリジナルマスターより「Esoteric Mastering」にて、アナログレコード専用にマスタリングを行いました。入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clock、MEXCELケーブルを惜しげもなく使用し、徹底して高音質化を目指したマスターを作成しました。
アナログ・カッティングは、ミキサーズラボ社にて、アナログ最盛期の名機、ノイマン社製カッティング・レースVMS80を使用しました。同機は西ドイツで製造され、現在日本国内では2台しか稼働していません。ミキサーズラボ社のご協力を得て、カッティングルームに「Esoteric Mastering」の機材を持ち込み、出力をノイマン社製カッティング・コンソールSP79Cにダイレクトに接続。コンソールのイコライザーを使わずに、「Esoteric Mastering」サウンドをそのまま、カッティング工程へ送り込みます。
カッティングは、ミキサーズラボ社のカッティング・エンジニア 北村勝敏氏。匠の手腕をマスター盤に注ぎ込んで頂きました。現在では、レコード・プレス用のマスター盤カッティングのみで、試聴のためだけにラッカー盤をカッティングする事は稀ですが、エソテリックでは音質を追及するため、コンソールへの伝送方式を変えながら複数のラッカー盤を作成しました。作成した複数のラッカー盤は、エソテリック・マスタリング・センターへ持ち帰り、ESOTERICのアナログターンテーブルGrandioso T1で試聴・音質確認を行い、最適な伝送方法を決定しています。
徹底してアナログの音にこだわりを込めて作成し、オリジナルマスターのもつ情報を伸びやかなサウンドでアナログレコード化することに成功しました。
ヴァイオリン協奏曲集《四季》 Le quattro stagioni
Side 1
協奏曲 第1番 ホ長調 RV269 《春》
Concerto No. 1 for violin and strings in E major, RV 269 "La primavera"
Band 1 第1楽章: Allegro
Band 2 第2楽章: Largo
Band 3 第3楽章: Allegro (Danza pastorale)
協奏曲 第2番 ト短調 RV315 《夏》
Concerto No. 2 for violin and strings in G minor, RV 315 "L'estate"
Band 4 第1楽章: Allegro non molto - Allegro
Band 5 第2楽章: Adagio - Presto - Adagio
Band 6 第3楽章: Presto (Tempo impetuoso d'estate)
Side 2
協奏曲 第3番 へ長調 RV293 《秋》
Concerto No. 3 for violin and strings in F major, RV 293 "L'autunno"
Band 1 第1楽章: Allegro (Ballo, e canto de'villanelli)
Band 2 第2楽章: Adagio molto (Ubriachi dormienti)
Band 3 第3楽章: Allegro (La caccia)
協奏曲 第4番 へ短調 RV297 《冬》
Concerto No. 4 for violin and strings in F minor, RV 297 "L'inverno"
Band 4 第1楽章: Allegro non molto
Band 5 第2楽章: Largo
Band 6 第3楽章: Allegro
フェリックス・アーヨ(ヴァイオリン) Felix Ayo, Violin
イ・ムジチ合奏団 I Musici
[オリジナル・レコーディング]
[録音]1959年4月29日~5月6日、ウィーン
[レコーディング・プロデューサー]ヴィットリオ・ネグリ
[レコーディング・エンジニア]トニー・ブツィンスキ、ハンス・ラウターシュラーガー
[初出]Philips 835 030 AY(1961年)
[日本盤初出]Philips SFL7507 (1961年8月)
[アナログレコード]
[プロデューサー] 大間知基彰 (エソテリック・マスタリング・センター)
[アソシエイト・プロデューサー] 吉田穣 (エソテリック・マスタリング・センター)
[リマスタリング・エンジニア] 東野真哉 (エソテリック・マスタリング・センター)
[リマスター]2024年12月 エソテリック・マスタリング・センター、「Esoteric Mastering」システム
[アナログレコード・カッティング] 北村勝敏 (株式会社ミキサーズラボ)
[解説] 浅里公三
[企画・販売] ティアック株式会社
[企画・協力] 東京電化株式会社