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アンプロンプチュ (CD/SACDハイブリッド)
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アンプロンプチュ (CD/SACDハイブリッド)
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横山幸雄
■レーベル:アールアンフィニ
■発売日:2016年6月8日
■品番:MECO-1034
■仕様:SACDハイブリッド
■JAN:4562264260362
陰影に富み慈愛に満ちたシューベルトの極微
横山幸雄初のシューベルト・アルバムは、即興曲全8曲を収録。アルバム・タイトルのアンプロンプチュ Impromptuは、フランス語で即興曲の意味ですが、このアンプロンプチュはまさにシューベルトを代表する名曲であり、かつピアノ学習者の必須曲でもあります。そのタイトルのとおり自由で叙情的な美しい8曲と、横山幸雄の究極の美音とのマリアージュは、DSDレコーディングの高音質と相俟ってまさに至高の芸術美を現出しています。
収録曲目
シューベルト
4つの即興曲作品90 D.899
①第1番ハ短調
②第2番変ホ長調
③第3番変ト長調
④第4番変イ長調
4つの即興曲作品142 D.935
⑤第1番ヘ短調
⑥第2番変イ長調
⑦第3番変ロ長調
⑧第4番ヘ短調
横山幸雄さんの歩みとシューベルト
世のピアニストのレパートリーの双璧に、ベートーヴェンとショパンがある。この両者をともに得意とするピアニストは稀だが、横山さんはその数少ない一人で、1992~99年に『ショパン全曲連続演奏会』を完遂したのに始まり、1998~99年には『ベートーヴェン12会』と題した作品番号つき全ピアノ曲の連続演奏会を開催、2005年にはピアノ協奏曲の全曲演奏会も成功させ、さらに2010年のショパン生誕200年記念イヤーには一連のショパン関連企画を手掛けるという具合に、この二大秀峰を等しく踏破してきた。近年は、9月に恒例となった東京オペラシティコンサートホールの長時間リサイタルで、ベートーヴェン、ショパンに加えて、リストも採り上げた。さらに、彼の眼は早くも2020年のベートーヴェン生誕250年イヤーを見据えて、2013年からは同シリーズで『ベートーヴェン・プラス』が始まっている。筆者もこの9月の長時間リサイタルを何回か拝聴したが、さほど知られていない作品も創意ゆたかに面白く聴かせ、著名曲からは新たな聴きどころを見出させてくれる横山さんの演奏には、いつも我知らず惹きつけられてしまう。
その横山幸雄さんが、このほど、シューベルトの即興曲を全曲録音した。彼ほどのピアニストとなると、日頃のコンサートでよく採り上げるレパートリーは氷山のほんの一角で、水面下にはその何十、何百倍もの蓄積がある。シューベルトの即興曲はそのベーシックな財産のひとつなのだろうが、半永久的に残る録音作品を制作するとなると、生半可な覚悟では臨めない。現在の横山さんは、2020年のベートーヴェン・イヤーに向けて多大なエネルギーを傾注されているとばかり思っていたが、こうしてシューベルト・アルバムがつくられたところをみると、彼がベートーヴェンを狭義で捉えているのではなく、この巨人を核とする周辺作曲家まで包括した、広義のベートーヴェン像を表現しようとしているのではないかと思えてきた。事実、オペラシティの『ベートーヴェン・プラス』シリーズも、ご本尊に何名かの作曲家を取り合わせた企画である。そうした認識であれば、生涯ベートーヴェンの背を仰ぎ見続けたシューベルトなど、まさにこの巨人に最も近いところにいる作曲家と言えるだろう。
そんなことを思いながら、さっそく試聴盤を聴かせていただいた。1曲目の作品90-1は、冒頭のG音4オクターヴ・ユニゾンのあとにフェルマータを驚くほどたっぷりととってから、繊細なピアニッシモで感銘深く歌い出された。そのあとのダイナミクスはきめ細やかで、やがて左手に出現する3連符は、心の淵にひたひたと打ち寄せる波を思わせる。作品90-2はなめらかなレガートのお手本のようだ。そして、作品90-3では彼のナイーヴな感性が随所にこぼれ、作品90-4では弱音側に広いダイナミクス・レンジを堪能できる。
作品142に入ると、作品90のときとはまた異なったタッチが選択される場面が増えて、例えば作品142-1などは、場面転換の妙にうっとりした。作品142-2、作品142-3は、単なる温和で美しい曲として表現されているのではなく、楽想ごとにさまざまなイメージを聴き手に掻き立てる、強い触発力を持つ演奏である。これら珠玉の小品群はハンガリーの香りのする最終曲で結ばれるが、ここでも横山さんの明晰な音の粒は深い陰影をまとって、聴く者の心にそっと忍び込んでくる。
(萩谷由喜子)
横山幸雄 Yukio Yokoyama プロフィール
1990年ショパン国際コンクールにおいて歴代の日本人として最年少で入賞し、文化庁芸術選奨文部大臣新人賞など数多の賞を受賞。以来、人気実力ともに常に音楽界をリードするトップ・アーティストとして活躍している。
ショパン生誕200年を迎えた2010年に、ポーランド政府より、ショパンの作品に対して特に顕著な芸術活動を行った世界で100名の芸術家に贈られる「ショパン・パスポート」が授与される。同年「ショパン・ピアノ・ソロ全166曲コンサート」を行い、ギネス世界記録に認定された。また、2011年には212曲を演奏し、自身の記録を更新した。2013年からベートーヴェン生誕250年に向けてのシリーズ「ベートーヴェン・プラス」をスタートした。2015年にはラヴェル生誕140年を記念して、パリでラヴェルのピアノ独奏作品の全曲演奏会を成功させるなど、自ら企画する数々の意欲的な取り組みにより、高い評価を確立している。
リリースされたCDは、文化庁芸術祭レコード部門優秀賞、国際F.リスト賞レコードグランプリ最優秀賞等栄えある賞を受賞。2011年上野学園石橋メモリアルホールで行った「横山幸雄プレイエルによるショパン・ピアノ独奏曲全曲集」をホールとキングレコードとの共同事業(全12タイトル)でリリース。2012年デビュー20周年記念コンサートのライヴ録音(チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番)、「プレイズ・リスト2013」、「プレイズ・シューマン2014」、「プレイズ・モーツァルト2015」をソニー・ミュージックダイレクトから、そしてオクタヴィアからは矢部達哉との共演で「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番《クロイツェル》&第10番」をリリースした。
TOKYOFM「横山幸雄のピアノでめぐり逢い」のパーソナリティをつとめ、東京と京都にレストランをオープンし音楽と旬の食をプロデュースするなど、活躍は多岐にわたる。
現在、上野学園大学教授、エリザベト音楽大学客員教授。
オフィシャルサイト
http://yokoyamayukio.net/
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陰影に富み慈愛に満ちたシューベルトの極微
横山幸雄初のシューベルト・アルバムは、即興曲全8曲を収録。アルバム・タイトルのアンプロンプチュ Impromptuは、フランス語で即興曲の意味ですが、このアンプロンプチュはまさにシューベルトを代表する名曲であり、かつピアノ学習者の必須曲でもあります。そのタイトルのとおり自由で叙情的な美しい8曲と、横山幸雄の究極の美音とのマリアージュは、DSDレコーディングの高音質と相俟ってまさに至高の芸術美を現出しています。
収録曲目
シューベルト
4つの即興曲作品90 D.899
①第1番ハ短調
②第2番変ホ長調
③第3番変ト長調
④第4番変イ長調
4つの即興曲作品142 D.935
⑤第1番ヘ短調
⑥第2番変イ長調
⑦第3番変ロ長調
⑧第4番ヘ短調
横山幸雄さんの歩みとシューベルト
世のピアニストのレパートリーの双璧に、ベートーヴェンとショパンがある。この両者をともに得意とするピアニストは稀だが、横山さんはその数少ない一人で、1992~99年に『ショパン全曲連続演奏会』を完遂したのに始まり、1998~99年には『ベートーヴェン12会』と題した作品番号つき全ピアノ曲の連続演奏会を開催、2005年にはピアノ協奏曲の全曲演奏会も成功させ、さらに2010年のショパン生誕200年記念イヤーには一連のショパン関連企画を手掛けるという具合に、この二大秀峰を等しく踏破してきた。近年は、9月に恒例となった東京オペラシティコンサートホールの長時間リサイタルで、ベートーヴェン、ショパンに加えて、リストも採り上げた。さらに、彼の眼は早くも2020年のベートーヴェン生誕250年イヤーを見据えて、2013年からは同シリーズで『ベートーヴェン・プラス』が始まっている。筆者もこの9月の長時間リサイタルを何回か拝聴したが、さほど知られていない作品も創意ゆたかに面白く聴かせ、著名曲からは新たな聴きどころを見出させてくれる横山さんの演奏には、いつも我知らず惹きつけられてしまう。
その横山幸雄さんが、このほど、シューベルトの即興曲を全曲録音した。彼ほどのピアニストとなると、日頃のコンサートでよく採り上げるレパートリーは氷山のほんの一角で、水面下にはその何十、何百倍もの蓄積がある。シューベルトの即興曲はそのベーシックな財産のひとつなのだろうが、半永久的に残る録音作品を制作するとなると、生半可な覚悟では臨めない。現在の横山さんは、2020年のベートーヴェン・イヤーに向けて多大なエネルギーを傾注されているとばかり思っていたが、こうしてシューベルト・アルバムがつくられたところをみると、彼がベートーヴェンを狭義で捉えているのではなく、この巨人を核とする周辺作曲家まで包括した、広義のベートーヴェン像を表現しようとしているのではないかと思えてきた。事実、オペラシティの『ベートーヴェン・プラス』シリーズも、ご本尊に何名かの作曲家を取り合わせた企画である。そうした認識であれば、生涯ベートーヴェンの背を仰ぎ見続けたシューベルトなど、まさにこの巨人に最も近いところにいる作曲家と言えるだろう。
そんなことを思いながら、さっそく試聴盤を聴かせていただいた。1曲目の作品90-1は、冒頭のG音4オクターヴ・ユニゾンのあとにフェルマータを驚くほどたっぷりととってから、繊細なピアニッシモで感銘深く歌い出された。そのあとのダイナミクスはきめ細やかで、やがて左手に出現する3連符は、心の淵にひたひたと打ち寄せる波を思わせる。作品90-2はなめらかなレガートのお手本のようだ。そして、作品90-3では彼のナイーヴな感性が随所にこぼれ、作品90-4では弱音側に広いダイナミクス・レンジを堪能できる。
作品142に入ると、作品90のときとはまた異なったタッチが選択される場面が増えて、例えば作品142-1などは、場面転換の妙にうっとりした。作品142-2、作品142-3は、単なる温和で美しい曲として表現されているのではなく、楽想ごとにさまざまなイメージを聴き手に掻き立てる、強い触発力を持つ演奏である。これら珠玉の小品群はハンガリーの香りのする最終曲で結ばれるが、ここでも横山さんの明晰な音の粒は深い陰影をまとって、聴く者の心にそっと忍び込んでくる。
(萩谷由喜子)
横山幸雄 Yukio Yokoyama プロフィール
1990年ショパン国際コンクールにおいて歴代の日本人として最年少で入賞し、文化庁芸術選奨文部大臣新人賞など数多の賞を受賞。以来、人気実力ともに常に音楽界をリードするトップ・アーティストとして活躍している。
ショパン生誕200年を迎えた2010年に、ポーランド政府より、ショパンの作品に対して特に顕著な芸術活動を行った世界で100名の芸術家に贈られる「ショパン・パスポート」が授与される。同年「ショパン・ピアノ・ソロ全166曲コンサート」を行い、ギネス世界記録に認定された。また、2011年には212曲を演奏し、自身の記録を更新した。2013年からベートーヴェン生誕250年に向けてのシリーズ「ベートーヴェン・プラス」をスタートした。2015年にはラヴェル生誕140年を記念して、パリでラヴェルのピアノ独奏作品の全曲演奏会を成功させるなど、自ら企画する数々の意欲的な取り組みにより、高い評価を確立している。
リリースされたCDは、文化庁芸術祭レコード部門優秀賞、国際F.リスト賞レコードグランプリ最優秀賞等栄えある賞を受賞。2011年上野学園石橋メモリアルホールで行った「横山幸雄プレイエルによるショパン・ピアノ独奏曲全曲集」をホールとキングレコードとの共同事業(全12タイトル)でリリース。2012年デビュー20周年記念コンサートのライヴ録音(チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番)、「プレイズ・リスト2013」、「プレイズ・シューマン2014」、「プレイズ・モーツァルト2015」をソニー・ミュージックダイレクトから、そしてオクタヴィアからは矢部達哉との共演で「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番《クロイツェル》&第10番」をリリースした。
TOKYOFM「横山幸雄のピアノでめぐり逢い」のパーソナリティをつとめ、東京と京都にレストランをオープンし音楽と旬の食をプロデュースするなど、活躍は多岐にわたる。
現在、上野学園大学教授、エリザベト音楽大学客員教授。
オフィシャルサイト
http://yokoyamayukio.net/