北欧オールドスピーカーにも寄り添う造形と仕上げ。
ハイパワー管の迫力と、あでやかにブレンドされた音色

　PMA3は、是枝重治氏が『管球王国』116号「マイ・ハンディクラフト」企画で発表した6GB8シングル・インテグレーテッドアンプPMA3です。ジュラルミンとアルミのパネルでシャーシをコンパクトに組み上げ、フォノ入力とトーンコントロールも装備。北欧ヴィンテージの小型スピーカーとの組合せなど、プリメインアンプとして生活空間にも馴染みやすい意匠が意図されています。出力管の東芝製6GB8は国産のヴィンテージ・ハイパワー管として知られるビーム管で、本機は出力段シングル構成、出力14W＋14Wでまとめられました。

　ビーム管6GB8の高感度を生かして、増幅回路はシンプルに構成されています。出力段はUL接続・自己バイアス動作。初段はレイセオン製サブミニチュア管5744のSRPP回路で、出力端から初段への負帰還量は12dBです。ECC83S/12AX7によるフォノイコライザー回路は正帰還を併用して闊達な音を作り、ECC81/12AT7によるトーンコントロール回路も装備。プリメインアンプとして充実した設計が追求されています。フロントパネルにはL／Rch独立のレベル調整を装備し、内部には低域100Hzを＋4dB上昇させるスイッチも搭載しました。

　本機の製作動機のひとつが、ノルウェー製小型ヴィンテージスピーカー、タンバーグ（Tandberg）System7との組合せ。桟木をフロントにあしらった瀟洒な意匠で仕上げられ、天井に向けて鳴らすこともできるスピーカーです。PMA3はタンバーグSystem7を鳴らして、直截であると同時にたおやかな音を空間に広げました。『管球王国』試聴室での大型モニタースピーカーによる試聴でも、ハイパワー管の迫力と、あでやかにブレンドされた音色が聴けました。PMA3は放熱に十分に配慮された設計ですが、是枝氏は製作記で、ラックの中ではなく家具の上に置いて使ってくださいと記しています。造形と仕上げも、そうしたセッティングが意図されたアンプです。

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